病院の訴訟のリスク
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最終更新日:2015/12/24
医療に関する記事
多くのケースで、医療ミスがあった云々以上に、医者の態度が、あるいは説明不足が、患者さんを硬化させるという。逆にそれがうまくいっていれば、少々の(もちろん、一生懸命やったうえでの話だが)ミスがあっても、訴訟沙汰にまではならないのが通例とのこと。
過誤がないのに賠償金が支払われたケースも結構あったのだが、考えないといけないのは、ミスがあったのに訴えられないケースが、アメリカのような訴訟社会でも大部分であることと、ミスがないのに訴えるケースが相当数あることである。これは、大きな問題である。
ニューヨークにある五一の病院から無作為に選んだ三万一四二九例の診療録を調べ、研究グループの医師たちがなったのは八例だった。ところが訴訟になったのは五一例で(つまり、四三例は過誤がなかったのに医療訴訟になったことになる)、実はミスがない訴訟のほうがはるかに多かった。
今後は、日本もどんどん訴訟社会になっていくだろう。一方では、厚生労働省のごり押しで事故調が具体化すれば、医師は、どんな形であれ、患者さんが死ぬような医療を避ける方向に向かうはずだ。そうでなければいけないのである。
どんなに医療崩壊が進んでも
有名な訴訟事件では、医者の態度が悪すぎたり、訴える側を責めたり、まったく聞く耳を持たなかったり、ほとんどまともに説明しないということを、少なくとも患者さんサイドから取材の際に聞いているそうだ。これは、きわめて大事な話である。
どんなに医療崩壊が進んでも、厚生労働省としては大事な天下り先なので、無理にでも事故調をつくるだろう。自民党も賛成していることだし、自民党が事故調に賛成しているようなら、次の選挙では民主党に入れるのが、医者の生き延びる道かもしれない。これは、もちろん建設的な話ではない。ただ、事故調ができなくてすんでも、民事訴訟は(あるいは刑事訴訟も)覚悟しないといけない。
死ぬ可能性がある患者さんの手術などを引き受けない形。あるいは、事故調に言い逃れができるように、なるべく標準的とっておくことなどが必要になるだろう。運悪く患者さんが急変したら、人工呼吸器でも何でも使って、可能な限り延命をして、手術にまつわる死でないことにするということにでもなるのだろうか?
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