医療行為を裁判所が判断できるのか

公開日: : 最終更新日:2016/01/07 医療に関する記事

どんな簡単な手術でも、低い確率でも、死亡や悪化のリスクはある。だから昔は、お産でも手術でも、ある程度は死を覚悟していた。これは医療技術的には仕方がなかったことであろう。しかし医療レベルが上がると、そういうことが滅多になくなった。逆にそういうことが起こると、医療ミスだと思われるようになった。

全国で産科医不足や医療崩壊が起こってしまった。医療行為を裁判所が判断できるのか。そういうことを踏まえると、この判決はいくつかの意味で穏当な判断だと私は考える。一つには、医療行為というのは結果が予見できないことがある。

予見できないことが起こった際に、最悪の事態を防ぐ方法はないわけではない(もちろん、それでも最悪の事態が起こる確率はゼロにはできないが)。サポートしてくれる医者がいれば、たとえば自分は止血に専念しながら、サポートしてくれる人が、ほかに起こりうることの管理ができる。

お産や手術をやらなくなる

結果が悪ければ刑事罰というのでは、どんな手術でもお産でも一定の確率で死亡が起こるのだから、その確率が少しでも少ない病院に医者が逃げたり、その少ない確率を避けて、お産や手術をやらなくなるのは、当然の成り行きだ。

経験が豊富なほうが、急変時にすべきことも考えうる。しかし、若い医者が一人で手術やお産をしなければならないことがあることを考えると、相当悪質なミスでない限り、結果が悪かったからといって刑事罰を科すようだと、リスクがゼロでないことがわかっている医師は、そんなことを引き受けなくなる。結果的に一人医長の(つまり産科の医者が一人しかいない)病院を中心にお産をやめる病院が相次いだ。

二つ目には、日本では統一した標準治療がない。アメリカでは統計データなどをもとに、どういうケースでどうすべきということが相当細かくマニュアル化されているが、日本ではそうではない。今回も胎盤を剥離すべきか、子宮を摘出すべきかの判断が問題になった。

経験的に死亡のリスクが高くないことから、この医師はその判断よりも将来、子供が産めることを優先したのだろうが、どちらがいいのかが確立していない。これはどうなのだろうか。

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