大企業の集団検診で達人の域に達する

公開日: : 最終更新日:2015/10/08 医療に関する記事

R氏とて検診医の経験もあるにはあるが、それだって近所の小学校だけ。大企業あげての集団検診など、今回が初めてである。ある地方の病院からこの春、都内の総合病院に赴任してきたR内科医。以前いた病院は、個人病院に毛が生えた程度の規模だったから、ここへ来てからというもの、見るものすべてびっくりすることばかりだった。施設、患者数、システム、覚えることが多すぎて、まじめがとりえのR氏の毎日は、目まぐるしく過ぎていく。相手は従業員2400人を数える家電メーカー。本社近くの体育館を借り切っての検診は1日がかりだ。次から次へとわき出てくる患者たちを相手に、目の回るような忙しさ。

気がつけば、耳のあたりがなにやらしくしく痛む。触ると熱をもっているようだ。なんと、長時間聴診器をしていたために、耳の穴がこすれて血がにじんでいるではないか。消毒液を湿したガーゼでしばらく冷やしてから、席に戻り、なにげなく隣の同僚を見てR氏は驚いた。なんと耳の穴につながっているはずの彼の聴診器の端は、耳のすぐうしろにあてられ、しっかり首からぶら下がっているのだ!つまり、彼は聴診器を耳に差し込んでいないのである。

君は達人ですねえ

上学生の頃、臨床実習で、あまりの緊張に、R氏も同じようにはからずもそれをやったことがある。そのとき教授に皮肉を込めてこう言われたものだ。君は達人ですねえ、聴診器を耳に差さずに胸音が聞けるとは。あれでどうやって胸音が聞こえるのか?はっと気づいて、R氏は思わずつぶやいた。達人だ。集団検診など、達人の境地でなければやっていられないかもしれない。社員数千人の大会社が一挙に検診なんてことになれば、それもあたりまえかもしれないが、ある医者に言わせると、年に1回行われる会社の健康診断などというものは、実はあまり信用できないものらしい。

レントゲン写真にしても、ものすごい数のピンボケ写真を医者はほとんど流れ作業で診ていく。万が一、それで異常が見つかったのなら、相当運がいいか、相当悪いかのどちらだろう。病院の経営上、あまり細かいことは言ってられないというのが現状らしいのである。医者のほうだって、もちろんそれがいいとは思っていない。けれども、この会社の検診というお仕事、病院側からすれば、機材がそろってさえいれば経費は一切かからないから、かなりの収入源にはなるようである。

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